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 姫百合

Author: 姫百合
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あらすじ

人間の父親と猫科モンスターの母親の間に生まれたハーフの絶世の美少年・ジュリ。
大家族の中でアイドルとして育てられてきた彼は、15歳にしてようやくハンターとして世間に出ることに。
家族は両親の他に1人の兄と7人の姉、1人の義姉、2人の義兄、4人の甥、2人の姪+熊みたいな同居人の21人家族。
ラブコメ度高めですが、何だかんだで結構シリアスも。
去ったヒロイン追いかけ中。ライバルは王子さま。15禁です。
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プロローグ


 黒猫の耳と尾っぽに、ガラスのような銀色の髪の毛。
 大きな黄金の瞳に、真っ白な肌、小柄で華奢な身体。

 その顔立ち。

 立てば絶世の美女。
 座れば絶世の美女。
 歩く姿もやっぱり絶世の美女。

 そんなブラックキャットという猫科モンスターを母親を持つジュリ。

 その外見をまんま受け継いだ彼は、母親に加えて人間の父親と1人の兄、7人の姉を持ち。
 さらに兄の妻である1人の義姉と、姉の夫である2人の義兄を持ち。
 おまけに4人の甥と2人の姪を持ち。

 性格はとても素直で、とても心優しく、そして大きくなるにつれて発覚した母親譲りの天然バカ。

 その外見上、一家のアイドルとして愛され。
 母を深く愛する父からは特に溺愛され。
 幼い頃に結婚の約束をした5つ年上の幼馴染からも愛され。

 それはもう、大切に大切に育てられ。
 父親からは相当な過保護で育てられ。

 ほぼ箱入りのまま、先月15歳の誕生日を迎え。
 葉月ギルドのギルド長である父親により、試験を受けることなくハンターの資格を取り。

「父上、母上、兄上、姉上。僕はハンターとなって強くなり、将来は立派なカブトムシになってみせます」

 明日、ついに世間というものに出る日が来た。
 
 

第1話 家族は21人です 1/3


 ジュリは葉月島葉月町の外れにある屋敷で暮らしている。
 父親――リュウが建てたそれは、一見城と見間違えてしまうほど大きい。
 現在21人という大家族にも関わらず、部屋はまだ余っているほど。

 ジュリの1日は、兄で長男のシュウが起こしに来るところから始まる。

「ほーら、ジュリ。朝だぞー」

 兄の優しい声に黒猫の耳をぴくっと動かし、ジュリは目を覚ました。
 大きな黄金の瞳に映る、父親譲りの凛々しく整った顔立ち。
 ジュリに向けられるその笑顔はいつも優しい。

 NYANKOシリーズ番外編を含めると3代目主人公のシュウは、現在27歳の超一流ハンター。
 ジュリやその姉たちもそうであるが、大人の姿になってからは老けないモンスターの血を引いているが故に、その外見はまだ20歳の頃から変わっていない。

「おはようございます、兄上」

 そう笑顔を返してジュリがベッドから起き上がると、頭にシュウの手が重なってきた。

「もう朝ご飯出来上がってるから、顔洗って早く下りて来るんだぞ」

「はい、兄上」

 と、184.5cmと長身のシュウの顔を見上げて承諾したあと、ジュリはその黒猫の尾っぽの付いた後姿が部屋から出て行くまで見送った。
 そのあと部屋に備え付けてある洗面所へと向かって行く。

(兄上は今日もかっこいいなあ……)

 そんなことを思いながら、洗顔のときに使うピンク色のヘアバンドを装着して前髪を上げる。
 鏡に目を向けると、そこには絶世の美女と言っても過言ではない母親――キラとそっくりな姿がある。

 それを見つめながら、ジュリは小さく溜め息を吐いた。
 といっても、己の姿に見惚れているわけではない。

 同じ整った顔立ちでも凛々しくて、黒々とした鋭い瞳をしていて、男らしい身体つきをしているリュウそっくりに生まれてきたシュウが、少しだけ羨ましかった。

 数秒鏡の中の自分を見つめたあと、ジュリははっとして水道から水を出した。

「いけない、兄上に早く下りてきなさいって言われたんだった!」

 急いで顔を洗ってふかふかのタオルで拭き、スリッパの音をパタパタと立てて部屋から飛び出す。
 すると、左の方から声が聞こえてきて、ジュリはそちらに耳を傾けた。

「こら、サラ! 早く起きて」

「うぅーん、レオ兄もうちょっと……」

 次女のサラと、その夫であるミックスキャットという猫科モンスターのレオンの声だ。
 ジュリの部屋から2つ部屋を隔てたところにある部屋のドアが開いている。

「まったく……」と、レオンの呆れたような溜め息。「子供たちはもう起きてるよ? お母さんがそんなことでどうすんの! ほら、早く起きる!」

「分かったよ、もう…。…んじゃ、寝起きの一発開始アルヨ」

「わっ! こ、こらサラっ!?」

「ヘイヘイヘイヘーーーイ♪」

 と、サラ・レオン夫妻の部屋から廊下へとぽいぽいと投げ出されてくる衣類。
 それを見て首をかしげながら、そちらへと向かって歩いて行ったジュリ。

「サラ姉上? レオ兄さま? 何をしているのですか?」

 と、部屋の中を覗き込むと、ダブルベッドの上に素っ裸のサラとレオン。

「うっわあああああっ!」とレオンが声をあげ、慌てて自分とサラの身体を布団で包んだ。「お、お、お、おはよう、ジュリ!」

 そんなレオンの傍ら、

「おはよ、ジュリ」

 なんら焦った様子のないサラ。
 現在26歳で2児の母、そして22歳の頃からは超一流ハンター。
 元は父親譲りの黒髪をしているが、カラーリングして明るい茶髪にしている。
 乱れて顔に掛かったそれを華奢な手でかき上げ、どちらかというと父親譲りの顔と、母親譲りの黄金の瞳を見せる。

「おはようございます、サラ姉上、レオ兄さま」と笑顔で返したあと、ジュリはもう一度聞いた。「さっき、何をしていたのですか?」

「寝起きのセッ――」

「はい、ストップ」

 と、妻・サラの口を塞いだ、夫・レオン。
 現在42歳であるが、外見年齢は23から25歳。
 キラと同様、純モンスターであるが故に、それ以上老けることはない。
 リュウやキラとの付き合いはもうかれこれ28年目になり、葉月ギルドの副ギルド長兼、超一流ハンター。
 それから、結婚してからも着いて来たグレルという熊みたいな人間のペット。
 リュウとキラの子供たちからは『レオ兄』と慕われている。

 柔らかな青い髪の毛に赤い瞳、灰色の猫耳に尾っぽ。
 切れると恐ろしいものの、温厚篤実な性格を表すかのような顔立ちを微笑ませてジュリに向けた。

「その…、なんでもないよジュリ? 気にしないで」

 と言われ、ジュリはにこっと笑って承諾する。

「はい、分かりました」

 そこへ1階から駆けて来たのは、

「ちょっとサラぁ? ご飯冷めちゃうじゃない、早くしてちょうだい」

 3代目ヒロインでシュウの妻、サラの親友である人間のカレンだ。
 現在26歳で3児の母、そして3年前からは一流ハンター。
 防御力はゼロに等しいものの、禁句を言われたときに鬼のように強くなるが故にそこまで伸し上がったツワモノ。

 身体はキラよりも小柄で、身長152cm。
 肩下5cmまである赤い髪の毛はくるくると巻かれており、気の強そうな瞳をした愛らしい顔立ちは、まだ10代に見えなくも無い。

 2階の廊下に辿り着くなり、カレンがジュリの姿を見て微笑んだ。

「あら、ジュリちゃん。おはよう」

「おはようございます、カレンさん」

「ご飯できてるわよ」

 とジュリの頭を撫でたあと、カレンが廊下に投げ出された衣類を拾い上げた。
 そして呆れたような顔をして、サラ・レオン夫妻の部屋の中を覗き込む。

「サラ、あなた本当にお義父さま似ね……。これからご飯って言ってるじゃない。何朝っぱらから発情してんのよ……」

「寝起きの一発が一番気持ち良くってさあ」

 あはは、と笑うサラにカレンが溜め息を吐いた。

「はいはい。ご飯冷めちゃうから、食べてからしてちょうだい……」

「はーい」

 と返事をしたサラ。
 レオンと共に衣類を身に着け、ベッドから出た。

 身長170cm弱でスタイル抜群のサラと、身長180cmでまさしく猫のようにしなやかな身体をしたレオンは、一見モデル同士の夫婦のようだ。
 ジュリのところへとやって来て、2匹ともカレンに続いて頭を撫でた。

「んじゃ、ご飯食べに下行こっかジュリ」

「はい、サラ姉上」

 カレンとサラ、レオンと共にジュリが緩やかな螺旋階段を下りて1階のキッチンへと向かうと、特注の大きなテーブルにシュウと長女・ミラが朝食を並べていたところだった。

「おはようサラ、ジュリ」

 と、ミラ。
 レオンは朝食を並べるのを手伝い、サラは席に着きながら言う。

「おはよ、お姉ちゃん」

「おはようございます、ミラ姉上」

 と続いたジュリのところへとミラがやって来て、ジュリの頭を撫でた。

「よく眠れた? ジュリ?」

 と、どちらかというと母親似の顔を微笑ませるミラ。
 現在27歳で、相変わらず極度のファザコン。
 シュウは5月生まれでミラは11月生まれと誕生日が半年しか変わらないが、それは人間と猫モンスターの子供――ハーフは5ヶ月で産まれるからだ。

 父親譲りの黒髪に黒々とした瞳、母親譲りの黒猫の耳。
 身長は160cmで、ジュリと目線の高さが一緒だった。
 ジュリの姉たちの中では一番弱いが、唯一父親から継いだ治癒魔法は優れている。

第1話 家族は21人です 2/3

「はい、ミラ姉上」

 とジュリが笑顔を返すと、ミラは「そう」と言って再び動き始めた。

 ジュリは自分の席に座ると、もう先に2階から下りて来て席に着いていた姉たちと義兄の顔を見回した。

「おはようございますリン姉上、ラン姉上、ユナ姉上、マナ姉上、レナ姉上、ミヅキさん」

「うむ。おはようなのだ、ジュリ」

 と声をそろえながらジュリの頭を撫でたのは、双子である三女・リンと四女・ランだ。
 現在25歳で、これも相変わらずシュウに対して極度のブラコン。
 18歳で魔法学校を卒業後ハンターとなり、20歳からは一流ハンターとして活躍している。

 母親譲りの銀色の髪の毛に、黄金の瞳、黒猫の尾っぽ。
 顔は父親と母親の中間といったところで、姉たちの中でサラの次に身長が高い165cm。

 三つ子――五女・ユナ、六女・マナ、七女・レナが続く。

「おはよう、ジュリ」

「おはよう…」

「おはよ、ジュリ!」

 現在23歳の三つ子。
 中身までそっくりなリン・ランに比べ、性格がまったく違う。

 ユナは小さい頃から泣き虫で、未だによく泣いている。
 ミラほどではないもののファザコンで、それから偏食だ。
 魔法学校を卒業後ハンターとなり、二流ハンターとして活躍中。

 マナは基本的に寡黙で泰然自若、舌はゲテモノ好き。
 恋人はレオンの飼い主であるグレル。
 魔法学校を卒業後、魔法薬専門の大学に入学し、今日から大学6年生だ。

 レナは巨大な胃袋を持ち、色気より食い気の元気一杯な少女であったが、13の時にミヅキと出会ってからはすっかり女の子っぽくなり。
 魔法学校を卒業後ミヅキと結婚し、1児の母に。
 ミヅキが葉月ギルドの右隣に建てたドールショップで共に働いている。

 三つ子の外見は、母親譲りの黒猫の耳に銀髪。
 顔はどちらかというと母親似で、その瞳の色は父親譲りでも母親譲りでもない淡い紫色だ。
 身長162cmと、少しジュリよりも目線が高い。

 三つ子がジュリの頭を撫でたあと、ミヅキもそれに続いた。

「おはよう、ジュリくん」

 レナの夫でシュウの親友の人間・ミヅキ。
 シュウやミラと同い年で、現在27歳。
 小さい頃から人形を作るのが好きで、レナが魔法学校を卒業すると同時に溜めたお金でドールショップを建てた。
 栗色の髪の毛にそれと同じ色をした瞳、ジュリと同様に美男というよりは美女の顔立ち。
 身長も166cmと小柄な方だ。

 レナと結婚すると言ったとき、はっきり言ってリュウに三途の川へと送られそうになった。
 だがレナや周りの説得により無事生き延びることができ、現在は1児の父親だ。
 ちなみにレオンもそうであるように、強制的に婿養子とされた。

 キッチンの中を見回し、ジュリは首をかしげる。

「マナ姉上、グレルおじさまはどうしたのですか? まだ眠っているのですか?」

「トイレで大きい方を9回に分けて流してる…」

「わあ、朝ご飯の前から快便ですね」

 とジュリが声を高くしたとき、グレルがキッチンに姿を現した。

「すっきりしたぞーっと♪ おっ、ジュリおはよーさんっ♪」

「おはようございます、グレルおじさま」

 ジュリの頭をぐりぐりと撫で回したあと、席に着いたグレル。
 レオンの飼い主でリュウの師匠、キラ並に極度の天然バカ。
 レオンがサラと結婚したとき、離れて暮らすのは寂しいからと着いて来た。よって同居している。
 雑誌・月刊NYANKOとHALF☆NYANKOの編集長であるが、超一流ハンターでもある。
 その力はバケモノ以外のなんでもない。

 身長195cmで筋肉隆々、体重120kg。
 頭から爪先まで体毛がふさふさしており、年々熊化していく。
 57歳の現在、人間であるかクマであるか本気で判別が難しい。

「それから」と、ジュリは続ける。「父上と母上はまだですか?」

 深く溜め息を吐いたシュウ。

「朝っぱらから何発イトナミすりゃ気が済むんだ、あのエロ親父は……」と呟いたあと、ジュリに苦笑を向ける。「頼むジュリ。親父と母さんの部屋に行って、呼んで来てくれるか? おまえが腹減ったーとでも言えば、きっとすぐにでも出てくるから。ああでも、ドアは開けちゃダメだぞ?」

「はい、兄上」

 と笑顔で承諾すると、ジュリは1階にあるリュウ・キラの夫婦部屋へと向かって行った。
 ドアの前に立つと、ジュリのよく利く黒猫の耳に中の声が聞こえてくる。

「お、おいリュウっ……! もうみんな待ってるぞっ!」

「もう一発楽しもうぜ、キラ」

「い、嫌だっ!」

「ったく仕方ねーな、俺の可愛い黒猫はよ。んじゃあ、もう二発な」

「増やすなっ!!」

 一体なんの話かと首をかしげながらジュリがドアをノックすると、中の会話が途切れた。
 リュウの不機嫌そうな声が返って来る。

「てーめえ、シュウ……! また俺とキラのイトナミを邪魔す――」

「ジュリです、父上」

 とジュリがリュウの言葉を遮ると、先ほどとは打って変わって機嫌の良さそうな声が返ってきた。

「おー、ジュリかー。どうした? 父上に用か?」

「お腹空きました、父上」

「そーかそーか。よしよし、ちょっと待ってろ」

 と声がしてから20秒。
 ドアが開いた。

 最初に姿を見せたのは母親・キラ。

「た、助かったぞジュリ……」

 と、顔を青くしながら出て来た。

 キラはジュリより5cmほど身長が低いものの、ジュリは鏡で自分の顔を見ているようだと思う。
 髪も瞳も肌の色も全て一緒だ。
 現在48歳のキラの外見年齢は20歳前後と、ジュリよりも少し大人っぽく見えるが。

 ブラックキャットはモンスターの中で最強を謳われる一種であるが、その中でもキラは飛び抜けて強い。
 また、リュウの妻でもあるが、それ以前にリュウのペットだ。

第1話 家族は21人です 3/3

「何をしていたのですか?」

 とジュリが訊くと、キラの背後にリュウが現れた。

「何でもねーぞ、ジュリ」

 とキラを左腕に抱っこし、ジュリを右腕に抱っこしてキッチンの方へと向かっていく。

 初代主人公・リュウ。
 現在49歳で、葉月ギルドのギルド長兼、超一流ハンター。
 最強の中の最強で、グレルと同様にその力はバケモノレベル。

 身長は185cmで、艶のある黒髪に、黒々とした鋭い瞳、凛々しく整った顔立ちはシュウと瓜二つ。
 その周りに漂うオーラだけで敵を圧倒してしまうようなやばさ。

 リュウは人間だというのに何故か老けなかった。
 一見シュウと年の近い兄のようだ。

 それから今年50歳だというのに、力は衰えていくどころか年々増していく。
 この大家族を守ろうとするが故に。
 ちなみに何故か、性欲も衰えるどころか年々増していく。

 リュウがキッチンに辿り着くなり、シュウが苦笑した。

「おい、親父……。母さんはペット時代からそうやって抱っこして歩いてたみてーだから、何も言わねーけどよ……?」

「あ? 何だ、シュウ」

「15歳のもう小さいとは言えねー息子を抱っこすんのはおかしいだろ」

「うるせー、俺の勝手だろ」

 と、ふんと鼻を鳴らしたリュウ。
 ジュリの額にキスし、娘たちから「おはようのキス」を頬にもらってにやける。

 そのあと、キッチンの中で遊んでいた孫たちに顔を向けた。

「ほら、チビ共。朝飯だから席に着け」

 そんなリュウの声に、キッチンの中を駆け回っていた3匹が止まった。
 それは、

「やっと来やがったぜ、師匠」

 サラ・レオン夫妻の長男・シオンと、

「ハラへったじゃねーか、師しょう」

 シュウ・カレン夫妻の長男・シュンと、

「おせーよ、ししょー」

 レナ・ミヅキ夫妻の長男・セナだ。

 シオンは9歳。
 シュンは7歳。
 セナは3歳。

 3匹とも、リュウを師に剣術を習っている。

 サラはシオンを産んだときに叫んだ。

「青い髪の親父が出て来たあぁぁああぁぁあああぁあああぁあぁぁあああぁぁああぁぁあぁぁああぁぁあっ!!」

 カレンはシュンを産んだときに叫んだ。

「赤い髪のお義父さまが出て来たのですわああぁぁああぁぁあああぁあああぁあああぁぁああぁぁぁあぁっ!!」

 レナはセナを産んだときに叫んだ。

「茶髪のパパが出て来たああぁぁああぁぁああぁぁあぁああぁぁああぁぁああぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあっ!!」

 と、不思議なことに、リュウ・キラの子供たちに生まれる最初の子供は、全員隔世遺伝で祖父・リュウ似の長男。

 シュウ・カレン夫妻に至っては、2度目の出産のときも隔世遺伝だった。
 そのときは祖父・リュウ似ではなく、祖母・キラ似の。

「あっ、おじいちゃまですわっ」

 と人形遊びをしていた手を止め、リュウに駆け寄って行ったのは、シュウ・カレン夫妻の長女・カノンと次女・カリン。
 6歳の双子だ。
 母親譲りの赤い髪をしているが、黄金の瞳や黒猫の耳、尾っぽ、顔立ちは祖母(キラ)譲り。

 よって、リュウがジュリ並に溺愛している。
 そんなもんだから、カノンとカリンはグラファコンだった。
 もちろん、父親のシュウのことも大好きであるが。

「はい、おじいさま」

 と読んでいた本を閉じ、おとなしく席に着いたのはサラ・レオン夫妻の次男・ネオン。
 シオンが生まれてから2年後に生まれ、それと同時に『レオ兄似の可愛い男の子を産むこと』というサラの夢が叶った。

 青い髪から赤い瞳、顔立ち、灰色の猫耳と尻尾まで、何もかも父親譲りだ。
 性格も父親と同様に温厚篤実で、サラから槍術を習っている。

 全員が席に着いたところで、ようやく『いただきます』。
 朝だけは全員一緒に揃って食事をすることが一家の決まりである。

「母さんにリン・ラン! カノンとカリンも! デザートは後から食えといつも言ってんだろうがっ!! こっ、こらセナっ! オレのおかず取るんじゃないよっ! おまえもう自分の分食ったの!? 胃袋母親似かよっ! って、グレルおじさん食べかす飛ばすなっ!!」

 なんて、食事のときはいつもうるさいシュウの声を聞きつつ、ジュリは口を開いた。

「あの、父上」

「何だ、ジュリ? 父上が魚ほぐしてやろうか」

「自分で出来るので大丈夫です」

「そうか。おまえは何て偉いんだ……!」

「それであの、父上」

「何だ、ジュリ? 父上が食わせてやろうか」

「自分で食べれるので大丈夫です」

「そうか。おまえは何て大人なんだ……!」

「それであの、父上」

「何だ、ジュリ? 父上が――」

「親父」と、サラが溜め息を吐いてリュウの言葉を遮った。「ジュリが言いたいこと言えなくて困ってるよ」

「ん?」とサラに一度顔を向けたあと、リュウが再びジュリに顔を向ける。「何だ、ジュリ?」

「父上、僕も今日からハンターです」

「ああ、そうだな」

「ハンターになって強くなったら、すぐにでもカブトムシになれますか?」

 カシャンッ……

 と動揺して箸をテーブルの上に落としたのは大人たち。

(ま、まずい……)

 と冷や汗を掻きそうになる。

 それはもう、ジュリは素直な子だった。
 両親や兄、姉、身近な者の言うことは何でも信じた。
 ほぼ箱入りで育ったせいかそれを疑うことなく、現在もそうである。

 よって、未だにサンタクロースを信じ。
 赤ちゃんはコウノトリが運んでくると信じ。

 そして小さい頃に持った夢――『大人になったらカブトムシになる』。
 それは叶うものだと信じている。

 リュウに一斉に視線が突き刺さる。
 全ては『ジュリの夢を壊すな!』なんて一同に命令したリュウの責任だった。

 リュウは一同の顔を見回したあと、ジュリに顔を戻した。
 期待に瞳をきらきらと輝かせているジュリを見つめ、答える。

「…も…もちろんだぜ、ジュリ。カブトムシ並に強くなったとき、おまえはカブトムシになる」

「わあ! 僕、頑張ります!」

 とはしゃぐジュリの傍ら、大人たちから漏れる深い溜め息。

「呆れるな、リュウ……」

「な、何だキラ。おまえの妹みてえなミーナだって、20歳までコウノトリ信じてただろ」

「ったく、リュウ。いい加減、ジュリのバカ何とかしろよーっと」

「うるせーよ師匠。あんただって救いようのねえバカだろうが」

 ふん、と鼻を鳴らすリュウ。
 カレンが続く。

「ねえ、お義父さま?」

「何だ、カレン」

「サンタクロースやコウノトリは微笑ましいと思いますわ」

「だろ、微笑ましいだろ。ジュリやーべえ可愛さだろ」

「だけど、カブトムシはいくらなんでもないのではないかしら」

「うるせー、貧乳」

 それ禁句。

「お義父さまああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあ!?」

 テーブルの下からマシンガンを取り出したカレン。

 ズバババババババッ!!

 と、入っている弾丸30発全てをリュウに向かってぶっ放す。
 それらを右手で全て受け止めながら、左手でお椀を持って味噌汁をすするリュウ。

「まあ、皆これからもいつも通りにな」

 と、一同に命令した。
 つまり、これまで通りジュリに夢を見させろ、ということだった。
 カレンが深く溜め息を吐く。

「バカ親にも程がありますわ、お義父さま」

「うるせーつってんだろうが。せめて豊胸手術してから文句言え、このド貧乳が」

 カレンのぶっ放したバズーカの弾丸が、キッチンの窓を粉砕した。
 
 
 
 
「では、行って参ります」

 と、見送りのキラとミラ、甥、姪に笑顔を向けたあと、ジュリは父や兄、姉、義兄、義姉らに続いて屋敷を後にした。
 きらきらと瞳を輝かせながら、葉月ギルドのある葉月町へと続く一本道を歩いていく。

「父上、兄上、姉上、カレンさんにレオ兄さま、グレルおじさま、ミヅキさん。僕、立派なカブトムシになってみせます!」

「…………」

 ジュリ15歳。
 人間の父親と、ブラックキャットという猫モンスターの母親の間に生まれたハーフ。

 絶世の美女である母親の容姿をそのまんま受け継いだが故に、21人家族の中でアイドルとして大切に大切に育てられ。
 父親からは特に溺愛され。

 ほぼ箱入りで育ち、この世に生まれて15年。

 ようやく世間に出るときが来た。
 



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第2話 ジュリの師匠 1/2

 仕事や学校へと向かう家族と共に、自宅屋敷をあとにしたジュリ。
 葉月町へと繋がる一本道を歩いて行き、そして葉月町に出て、興味津々と辺りを見回しながら葉月ギルドへと向かって行った。

 葉月町の中央にあるキラの銅像前まで来ると、それぞれ己が向かう場所へと散らばっていく。
 雑誌・月刊NYANKO&HALF☆NYANKOの編集長であるグレルは、その会社へ。
 マナは魔法薬専門の大学へ。
 レナ・ミヅキ夫妻は、葉月ギルドの右隣で経営しているドールショップへ。

 そして残りのジュリとリュウ、シュウ、サラ、リン・ラン、ユナ、カレン、レオンはハンターなので、葉月ギルドへ。
 葉月ギルドはキラの銅像前まで来たらすぐそこだ。

「んじゃ、行くぞジュリ」

 と言ってジュリを見るなり、リュウは首をかしげた。
 続いてジュリに顔を向けた一同も首をかしげる。

 ジュリがキラの銅像をじっと見上げている。
 そして何をするかと思いきや、

「母上、こんなところで何をしているのですか?」

 銅像に話し掛けた。
 たしかにキラの銅像ではあるが、見るからに石なのに何故キラ本人に思えるのかはジュリの頭にしか分からない。

「ちょ……」

 思わず人目を気にしてきょろきょろとしてしまう一同の中、1人だけにこにこと笑っているリュウ。

「ああ、どうしたんだろうなキラはこんなところで」

 とジュリに合わせながら、キラとよく似た声をしたリン・ランに顔を向けた。
 リュウの顔を見て、

(わ…、分かりましたなのだ父上っ……)

 暗黙の了解をしたリン・ラン。
 顔を見合わせたあと、リンの方がさっとキラの銅像の後ろに回った。

 ジュリがもう一度訊く。

「母上? こんなところで何をしているのですか?」

「その…、人間観察だぞジュリ」

 とキラを真似て答えるリン。

「人間観察ですか、母上。楽しいのですか?」

「そ、そうでもないな……」

「そうですか。それから母上、どうして頭から足まで灰色になっているのですか?」

「え!? ……そ、そ、その…だな……、さ、さ、さ、最新ファッションだぞっ……!」

「わあ、そうなんですか! ジュリはまた1つお利口になりました!」

「と、ともかくおまえは早くギルドに向かうのだジュリ!」

「はい、分かりました母上」

 と笑顔で承諾したジュリ。
 リュウの左腕に抱っこされながら、ギルドへと向かって行った。

 その後方数メートルを着いて行くシュウとサラ、リン・ラン、ユナ、カレン、レオン。
 サラがぼそっと口を開いた。

「ねえ、みんな」

「ん?」

「ジュリがまた1つバカになったね」

「…………」

 本日は新米ハンターとギルド長であるリュウが顔を合わせる日。
 また、新米ハンターは1年間、普段活動している一流以上のハンターに弟子入りしなければならず、その師弟の組み合わせが発表される。

 ジュリがリュウに抱っこされたままギルドの中に入ると、2代目主人公(NYANKO番外編)のリンクと、その娘のリーナの姿が目に入った。
 それから一流以上のハンターと、新米ハンターがずらりと並んでいる。

 それらがリュウに一斉に頭を下げる中、ジュリに駆け寄って行ったリーナ。

「ジュリちゃんっ!」とジュリをリュウの腕から引きずりおろし、ジュリの両手を握る。「なあなあ、うちの弟子がええやろっ? ジュリちゃん! そうやろっ?」

 人間の父親――リンクと、ホワイトキャットという猫科モンスターの母親――ミーナの間に産まれたハーフの長女・リーナは20歳。
 現在のジュリと同じ年のときにハンターになり、二流ハンターとして活躍中。
 また、幼い頃にジュリと結婚の約束をしている。

 その愛らしい顔立ちにグリーンの瞳、背まであるライトブラウンの髪の毛、白猫の耳、小柄な身体は母親そっくりだ。
 口調は父親の地方訛りを思いっきり受け継いだが。

 自分よりも5cmほど目線が上のジュリの顔を見つめ、わくわくとしながらジュリの返答を待つリーナ。
 その額に、リュウがビシっとデコピンする。

「いった! 何すんねん、リュウ兄ちゃん!」

 とリーナが牙を剥くと、リュウが溜め息を吐いた。

「新米ハンターは一流以上のハンターの弟子だって言ってんだろうが。おまえはまだ二流ハンターじゃねーか」

「ええやんか、一階級くらい!」

「ええわけないっちゅーねん」と、リーナの頭を後ろから軽く叩いたのはリンク。「昨日から何度も言ってるやろ。決まりは決まりや。それに何より、一流以上のハンターやないと危ないんや。二流ハンターが弟子を守りきれるかどうか……」

 と、娘に対して呆れたように溜め息を吐く。

 葉月ギルド副ギルド長で、リュウの親友のリンク。
 リュウと同い年で現在49歳。
 新米ハンターの頃はリュウと共にグレルの弟子だった。
 超一流ハンターでもあるが、相変わらず忙しいリュウに代わり、日々ギルド長室で本来はギルド長がすべき仕事をこなしている。
 故に裕福で良いはずなのだが、キラを姉のように慕う妻・ミーナが何でもかんでもキラと同じものをほしがるものだから、家計は火の車だった。

 そしてリンクは相変わらずの童顔に金髪。
 シュウの方がすっかり大人っぽく見える。

第2話 ジュリの師匠 2/2

「うちジュリちゃんのこと守れるっちゅーねん! おとんのどあほうっ!」

 とリーナにぽかぽかと殴られて苦笑しながら、リンクは手に持っていた紙をリュウに渡した。
 それには師弟の組み合わせが書かれている。

 ジュリを除くそれを発表したあと、リュウが傍らに立っていたジュリの頭に手を乗せて続けた。

「それから俺の娘たちに加えて、この俺の愛猫・キラそっくりな絶世の美少年に手ぇ出したヤロウは俺自ら死刑にしてやっから覚えておけよー」

 そんなリュウの言葉に顔面蒼白してしまうハンターたち。
 だが、

「えっと…、僕はジュリです。皆さん、これからよろしくお願いします」

 とジュリが破顔一笑した途端、その顔らは赤く染まり。
 20人以上が鼻から流血。
 10人以上が魂を抜かれたように卒倒につき、K.O。

「じゃー、おまえら師弟の組み合わせ決まったんだから早速働いて来い」

 なんてギルド長に命令されても、その場から動けないハンターたち。

 その傍らでジュリの師匠決めが始まった。
 リュウが言う。

「まず師となる者は一流ハンター以上だ。だが、副ギルド長は何かと忙しいから除く。よって、俺かシュウ、サラ、リン・ラン、カレンの中から選ぶわけだが……」

 うんうんと頷く、名を呼ばれた一同。

「ま、議論するまでもなく俺に決定だな」

 と言ったリュウに、カレンがすかさず突っ込んだ。

「お義父さまのところが一番ダメだと思いますわ」

「んだとコラ」

「何でもかんでもジュリちゃんにあまあまなお義父さまの弟子になってしまったら、成長するものもしませんわ。よって、ジュリちゃんはあたくしの弟子にしますわ」

「いや、待てカレン」とシュウが苦笑した。「おまえは自分の身を守るだけで精一杯だろ? まあ、切れたときは別としてさ…。だからジュリはオレの弟子にするよ」

「いやいやいや!」と、慌てたように声をあげたのはリン・ランだ。「そんな、兄上の手を煩わせませんなのだ! ジュリの世話はわたしたちが見ますなのだ!」

「いや、あんたたちじゃまだまだ心配だよリン・ラン」と、サラ。「この中じゃアタシが一番厳しくできるだろうし、アタシがジュリの師匠になるよ」

「いやいや、サラ」とリュウ。「おまえもまだまだ心配だ。ジュリを誰よりも守れるのはこの最強の父上だ。おまえは自分が怪我しないよう、細心の注意を払ってればいい。ていうかジュリに厳しいのは困る」

 リュウとシュウ、サラ、リン・ラン、カレンの顔を見回すジュリ。
 議論はだんだんと熱くなり、ギルドの中に怒声が響き始める。

「ああもう、うるせえっ! ジュリの師匠はこの俺だ!」

「お義父さまが一番ダメだと言っているのですわ!」

「カレン、おまえは自分の身を守ってろって! ジュリはオレの弟子でいいだろ!?」

「いやいや兄上っ! わたしたちがジュリの面倒見るから兄上は楽してくださいなのだ!」

「だからあんたたちじゃ心配だって、リン・ラン! アタシが適任だよ、アタシが!」

 議論は口論となり、おろおろとするジュリ。
 その大きな黄金の瞳に涙が溜まっていく。

「ち…、父上、兄上、姉上、カレンさんっ…! け、喧嘩しないでくださいっ……!」

 と言ったものの、熱くなっているその者たちの耳には声が届かず。
 ますます涙が込み上げ、

「ふみっ…、ふみっ……!」

 と、しゃくり上げ始めたジュリ。
 ここでようやくそれに気付いたリーナ。

「――ジュ、ジュリちゃっ……!」

 と顔面蒼白し、慌てて喧嘩している一同の身体をどつく。

「ちょ、ちょお、もう喧嘩やめぇや! ジュリちゃんが……!!」

 ジュリが?

 と、眉を寄せてジュリに顔を向けた一同。
 リーナに続いて顔面蒼白した。

「ジュ、ジュリ、落ち着け! ジュリ!」

 と慌てて声をあげたリュウだったが、もう遅いと判断してユナとサラを腕に抱く。
 続いてシュウがカレンを、レオンがリン・ランを、リンクがリーナを腕に抱いた。

 そして次の瞬間、

「ふみっ…ふみっ…、ふみゃああああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあああぁぁあぁぁあぁぁぁあああんっ!!」

 ギルドの外まで響き渡って行ったジュリの泣き声。
 それと同時に爆発した、ジュリの中の魔力。

 その破壊力、そこらの超一流ハンター顔負け。

 受付の窓は粉砕され。
 椅子やテーブルは破壊され。
 出入り口のドアは葉月町を行き交う人々目掛けて発射され。
 まだその場にいたハンターたちは構えていなかったものだから吹っ飛ばされ、そして壁にめり込む。

 おまけに、ギルド内にいる者全ての耳がキンキンと痛む。

「ああもうっ、あんたらのせいやで!」と、リーナは喧嘩をしていた一同を睨み付けたあと、必死にジュリを宥める。「大丈夫やで、ジュリちゃん! みんな喧嘩なんかしてへんから! ほら見てみぃ、みんなにこにこしてんで!?」

 と言われ、リュウやシュウ、サラ、リン・ラン、カレンの顔を見回すジュリ。
 にこにこと笑っているその顔たちを見ながら泣き止んだ。

 よって、嵐になっていたギルド内が静まる。

「わあぁぁあぁぁあ! おっ、おまえら大丈夫かいなぁぁあぁぁあぁぁあ!?」

 とリンクは壁から床へと転がり落ちたハンターたちに駆け寄り、

「オレ一般人に怪我させてねーか見てくる!」

 シュウは慌ててドアが吹っ飛んでいったギルドの外へと向かう。
 一方、ジュリはギルドの中を見回して再びおろおろとしてしまう。

「み、皆さん血出してどうしたんですかっ? 大丈夫ですかっ?」

「そんなに心配してやらなくても大丈夫だぜ、ジュリ」と、ジュリに笑顔を向けたのはリュウ。「こいつらみぃーんな、壁にめり込んで遊んでただけだから」

「そうなんですかっ?」

「ああ、そうだぜ」と言ったあとに、ハンターたちに笑顔を向けたリュウ。「なあ、そうだろ?」

 その笑顔の意味:同意しないと殺ス。

「も…、もちろんです、ギルド長」

 と顔面蒼白しながら答えたハンターたち。
 それを聞いたジュリが安堵して笑顔になった。

「わぁ、壁にめり込む遊びなんてあるんですね! ジュリはまた1つお利口になりました、父上!」

「ああ、そうだなジュリ」

 とにこにこ笑っているリュウに溜め息を吐いたあと、リーナはジュリの手を取った。

「あんたら揉めるから、うちがジュリちゃんの師匠になるわ」

 意義ありと再び騒ぎ始めるリュウとシュウ、サラ、リン・ラン、カレン。
 それを見ながら、リーナが再び溜め息を吐いた。

 「ほな誰の弟子にするん? 一流以上のあんたら、そうやってすぐ喧嘩しよって、またジュリちゃん泣かすだけやん」

「う……」

 と、言い返せず黙るリュウたち。

「ジュリちゃんのことなら心配すんなや。うち、瞬間移動持ってんねんで? いざとなったらすぐに逃げるっちゅーねん」

「でも――」

「ほな」と、リュウたちの言葉を遮ったリーナ。「ばいなら」

 にやりと笑い、ジュリを連れて瞬間移動でその場から消え去って行った。

「古っ!!」
 
 
 

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第3話 王女 1/3

 リーナの瞬間移動で森の中へとやって来たジュリは、辺りを見回しながら訊いた。

「リーナちゃん、ここでお仕事するの?」

「せやで、ジュリちゃん。ここなら見覚えあるんちゃう?」

「うん、あるんだけど……?」

 と首をかしげるジュリ。
 見覚えはあるのだが、はっきりと思い出せない。

 そんなジュリの様子を見て、リーナが遠くを指差した。

「ジュリちゃん、アレなーんや!」

「え?」とリーナの指した方向に顔を向けたジュリ。「あっ、僕のお家だ! じゃあ、ここ僕のお家の裏にある森?」

 とようやく気付いた。

「せやで。この辺にな、凶悪モンスターがおるって今朝ヒマワリ城から連絡があったんやって」

「ヒマワリ城から?」

 ジュリの自宅屋敷の裏に広がっている森を抜けると崖があり、その上には王族が暮らすヒマワリ城があった。

 うんと頷き、リーナが続ける。

「ジュリちゃん、王様のペットでお妃さまの……まあ、正室ちゃうけど、ホワイトキャット知ってるやろ?」

 ジュリは頷いた。
 2年前に即位した王が飼っているホワイトキャットは、元は兄であるシュウのペットだったから。
 ジュリがまだ幼い頃にシュウが数ヶ月だけ飼っていた記憶を、うっすらと覚えている。
 名はマリアと言った。

「そのマリアちゃんと王様の間に出来た娘さん……つまり王女さまがな、困ったことに、崖の上から飛び降りて、たまーにここの森で遊んでんのやて」

「わあ、王女さま凄いね」

「王女さまもハーフやからな。崖から飛び降りるのなんてわけないんやろ。防御力がやたら高いマリアちゃんの娘やしな。……せやけど、所詮ハーフで王女さまや」

 と、辺りを見回すリーナ。
 目当てのモンスターを探しながら続ける。

「昨夜、モンスターに怪我させられて帰ってきたんやて。そのモンスターを倒すのがうちの役目や。ジュリちゃんはうちの弟子やねんから、うちがモンスターを退治する様をちゃんと見とくんやで?」

「はい、リーナちゃん」

「ほな、まずそのモンスター探すで。ここら辺って聞いてたんやけどなあ……」

 と、ジュリの傍らを歩きながら、リーナは考える。

(ジュリちゃんも今日から新米ハンターとして世間に出たんやから、そろそろ色んなこと教えんとあかんよな…、優しく。あくまでも優しくや。ジュリちゃんに泣かれたらたまらからな。うち、吹っ飛ばされんで……)

 と苦笑したあと、にやけたリーナ。

(あれやんな。ジュリちゃんもう15歳やねんから、そろそろ夜のイトナミというものを教えなあかんよな、ここは。……あっかんわ、うち! どないしよーっ! どないしてジュリちゃんにあーんなこーんなこと教えよーっ!?)

 頭の中を渦巻くピンクな妄想に、思わずスキップをしながら進んで十数歩後。
 はっとして止まった。

「あれっ? ジュリちゃんカクレンボかいなっ?」

 と、辺りをきょろきょろと見回す。
 傍らにいたはずのジュリの姿がない。

 一瞬狼狽したリーナだったが、

「あっ、ジュリちゃんっ!」後方の木の陰にジュリを見つけて安堵し、小走りで駆けて行った。「もう、ちゃんとうちに着いてこなあかんやろ? …って、何してるん?」

 と首をかしげながら訊いてみる。

第3話 王女 2/3

 しゃがみ込んでいるジュリ。
 せっせと手を動かしながら答えた。

「蟻さんのトゲを抜いてあげてるの」

「は? 蟻にトゲ……?」

 と眉を寄せ、ジュリの向かいにしゃがんでその手元に注目したリーナ。

(ちょ……)

 顔が引きつる。

(ちょお待ちいな、ジュリちゃん…! それ、トゲちゃうで……! こ…、ここは教えてやらな、優しく! 優しくやで、うち!)

 こほんと咳払いをし、リーナは真剣な顔をしているジュリを見ながら続ける。

「な、なあ、ジュリちゃん?」

「蟻さん、僕が助けてあげるからね!」

 プチプチ…

 と、抜かれていくジュリの言う『トゲ』。

「ジュ、ジュリちゃんは、ほんまに優しい子やなあ?」

「ああっ、大変! こっちの蟻さんにもトゲが!」

 プチプチプチ…

「で、でも、それな?」

「わあっ、よく見るとどの蟻さんにもトゲが刺さってる!」

 プチプチプチプチ…

「そ、そのぉー……」

「誰がこんなひどいことしたんだろうっ!」

 プチプチプチプチプチ…

「ト、トゲというかな?」

「あれ、トゲを抜いた蟻さんまだここに居てどうしたの?」

 プチプチプチプチプチプチ…

「それ蟻さんの……」

「もう大丈夫だから行ってい――」

「足なんやけど」

「……え」

 ぱちぱちと瞬きをし、リーナの顔を見つめたジュリ。
 リーナは苦笑してもう一度言う。

「それトゲやなくてな、蟻さんの足……。せやから、その場から動きたくても、動けへんちゃうかなー…なんて……」

「……」

 地に転がっている蟻の胴体と、その足。
 それに目を落としたジュリ。

「ふ、ふにゃあぁぁああぁぁあっ! 蟻さぁあああぁぁぁああぁぁぁあぁぁあんっ!!」

 狼狽し、手の平に蟻の胴体と足を乗せて涙ぐむ。

 それを見て、もっと狼狽したのはリーナ。
 ジュリが泣かぬよう、慌てて宥める。

「ま、まあまあまあ、ジュリちゃん!」

「蟻さんごめんなさぁぁああぁぁああぁぁあぁぁあいっ!!」

「き、きっと蟻さん快感やったで!?」

「どうしよぉおおぉぉぉおおぉぉおおおぉぉぉおおうっ!!」

「だ、だ、だ、大丈夫! 大丈夫やからな、ジュリちゃん!? せやから泣いたらあかんで、泣いたら! お、男の子やろ!?」

 と必死に宥めるものの、ジュリはしゃくり上げ始める。

「ふみっ…! ふみっ……!」

「あ、あわわわわわ、あかん! もうダメや!」

 吹っ飛ばされる!

 とリーナが近くの木にしがみ付いたときのこと。

「にゃあぁぁぁああぁぁああぁぁあぁあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああぁぁんっ!!」

 と、女の子の絶叫。
 ジュリも女の子のような声をしているが、ジュリではない。

 その声に驚いたジュリの涙が引っ込み、とりあえず安堵したリーナだったが。

「な、何事や?」

 と、泣き声のした方に顔を向けるなり驚倒した。

 白猫の耳の生えている少女がモンスターに追いかけられている。
 顔は初めて見るが、煌びやかなドレスを身につけていることから、ついさっき話していた王女だと分かった。

第3話 王女 3/3

「おっ、王女さまっ!!」

 と2本の短刀を抜いて逆手に持ち、駆け寄って王女を背に庇ったリーナ。
 モンスターと向き合う。
 そのモンスターの特徴から言って、探していた凶悪モンスターに違いなかった。

「ええか、ジュリちゃん!」と両手の短刀を構え、「よく見とくんやで!」

「はい、リーナちゃん!」

 と離れたところからジュリの声が聞こえたあと、モンスターに飛び掛ったリーナ。
 愛するジュリの前だからと、華麗に両手の短刀を振るってモンスターを切り刻む。

(ふ……、決まったで。こんだけ華麗やったら、ジュリちゃん、もううちにゾッコンやろ。ま、とうにゾッコンやけろうけどな。なんせうちは、ジュリちゃんの婚約者やし!)

 と、モンスターの断末魔を聞きながらにやけ、ジュリに振り返った直後に突っ込む。

「――って、何してけつかんどんねんっ!!」

 目が丸くなってしまう。
 ついさっきまでリーナの背後にいたはずの王女が、いつの間にかジュリのところへと行っている。
 そしてジュリにしがみ付いている。

「って、尻噛んでるって意味ちゃうからな!?」

 と言いながら短刀を鞘に納め、慌ててジュリに駆け寄って行ったリーナ。
 相手は王女と分かっていながら、容赦なくジュリから引き剥がして投げ捨てる。

「にゃっ!」

 と地に倒れ、短く声をあげた王女。

 母親譲りのピンクブラウンのウェーブがかった長い髪の毛が乱れた。
 顔をあげると、父親譲りのブルーの瞳の瞳をしていた。

 その顔立ちをまじまじと見つめてみたリーナ。

(――まじでぇ?)

 衝撃に目を見開く。

(うちよりちょっと可愛いんちゃう!?)

 ジュリが慌てて王女の手を引いて立たせた。

「大丈夫ですか、王女さまっ……!」

「大丈夫ですにゃ、ジュリさん」

 とにっこりと笑った王女。
 リーナは眉を寄せた。

「ちょお、王女さま。なんでジュリちゃんやて分かったんです? ジュリちゃん舞踏会にも行ったことあらへんし、会ったことあらへんちゃいます?」

「はい。でも、お父上から聞いたことがありますにゃ。リュウさんの次男は、キラさんそっくりにゃと」 「ああ、王様から……。なるほどな。でも、よくキラ姉ちゃんと間違えんかったですね」

「だって」と、王女が片手を上げる。「触って確認しましたにゃ」

「触…?」眉を寄せたリーナ。「何……、ジュリちゃんの乳でも触わってキラ姉ちゃんかそうでないか確認したんです?」

「いいえ」と首を横に振った王女が、にっこりと笑う。「下の方ですにゃ♪」

「下……?」

「股間ですにゃ♪」

「――!?」

 リーナ、大衝撃。
 顔が引きつり、声が怒りに震える。

「な、な、な、なんやて…!? なんやてなんやてなんやて……!?」

 最初から関係なかったが、やっぱり関係ない。
 王女だろうと関係ない。

「そ、そんな大事なもん、うちでもまだ触ったことあらへんのに……!!」

 2本の短刀を再び抜き、

「こんの、にゃーにゃーと可愛いフリした痴女がっ……!!」

 逆手に持って構え、

「しばいてバラしてドラム缶に詰めて葉月湾に沈めてくれるわああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああっ!!」

 王女に切りかかった。
 
 
 


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第4話 大人のキス? 1/3

 ジュリの自宅屋敷の裏に広がる森の中。
 2本の短刀を逆手に持っているリーナが王女に切りかかる。

「しばいてバラしてドラム缶に詰めて葉月湾に沈めてくれるわああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああっ!!」

「だっ、駄目だよリーナちゃんっ!」

 と、ジュリが慌ててリーナの身体を抱きすくめた。
 リーナはじたばたと暴れながら、きょとんとしている王女に向かって怒声をあげる。

「王女さまやからってやってええことと悪いことがあんのや!」

 白猫の耳をぴくぴくと動かしながらリーナの声を聞き、首をかしげる王女。

「私が何かしましたかにゃ?」

「ハァ!? アホちゃうか自分!?」

「アホなんですかにゃ?」

「うちやないっちゅーねん! あんたや、あんた! うちでもまだ触ったことあらへんジュリちゃんの大事なモノ触ったやろ! どういう了見やねん! おお!?」

「ですからにゃ、キラさんかジュリさんか確認するために触ったのですにゃ」

「そんなん口で訊けば済むことやろ!? なのに触りくさりよってぇぇぇ……!」

「減るものじゃないですにゃ」

「そういう問題ちゃう! 死にさらせやあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁぁあ!!」

 と大暴れするリーナに向かって、ジュリが声をあげた。

「もうっ! 駄目だってばリーナちゃんっ!」

「離してや、ジュリちゃん!」

「父上も兄上も姉上も、ハンターはハンターじゃない人を傷付けちゃいけないって言ってたよ! だから駄目なんだよ、リーナちゃん!」

「ぐ……」

 と口を閉ざしたリーナ。
 そのことを忘れていたわけではないが、頭に血が上ると自制が出来なくなる。

 腕の中でおとなしくなったリーナを見たあと、ジュリがほっと安堵の溜め息を吐いた。
 リーナを離し、王女に顔を向ける。

「大丈夫ですか? 王女さまっ…!」

「ローゼですにゃ」

 と、ジュリに笑顔を向ける王女――ローゼ。
 ジュリが訊き直す。

「大丈夫ですか? ローゼさまっ…!」

「大丈夫ですにゃ」

「ほな」と、リーナはジュリの手を握った。「王女さまはお城へ戻ってください。お城の人きっと心配してはりますで。うちらも仕事終わったんでこれで」

 と軽く頭を下げ、リーナがジュリの手を引っ張って小走りでその場から去っていく。

「あっ、ジュリさん待ってくださいにゃっ……!」と追いかけてこようとしたローゼが、ドレスの裾を踏ん付けて転ぶ。「ふにゃっ!」

「ローゼさまっ!」

 と振り返り、ローゼのところへと戻ろうとしたジュリ。
 リーナに強く手を引かれ、斜め前を歩くリーナに顔を戻す。

「リーナちゃん? ローゼさまが――」

「放っときや。ハーフなんやから、その程度で怪我せえへん」

「でも、ローゼさまが――」

「なあ、ジュリちゃん! うち今日そんなに仕事あらへんから、マナちゃんに薬の材料でも採って行こうや」

「ねえ、リーナちゃん、ローゼさまが――」

「今月、マナちゃんたち三つ子の誕生日やしな」

「リーナちゃん、ローゼさまが――」

「マナちゃんが喜ぶようなええ材料あったらええなあ」

「聞いてよリーナちゃん、ローゼさ――」

「ああもうっ!」

 と、声をあげ、リーナが振り返る。
 5cmほど目線が上のジュリの顔を睨むように見るそのグリーンの瞳は、少し涙で潤んでいた。

第4話 大人のキス? 2/3

「なんやねん、王女さま王女さまって! あんな痴女放っとけって言っとるやろ!? ジュリちゃん分かってんのかいな! ジュリちゃんの婚約者はうちなんやで!?」

「わ…分かってるよ、リーナちゃん」と、困惑顔になるジュリ。「ど、どうして怒ってるの? どうして泣きそうなお顔してるの?」

「どうしてって、ジュリちゃんがうち以外の女のことばっか気にしてたら腹立つに決まってるやろ!? 世間に出て早速これかいなっ! ジュリちゃん箱入りのままの方が良かったわ!」

 リーナの瞳から一粒零れ落ちた涙を見て、さらに困惑したジュリ。
 カブトムシ柄のハンカチを取り出し、リーナの瞼に当てる。

「僕が悪いのっ? ごめんねっ? ごめんね、リーナちゃんっ……!」

 と謝るジュリの顔を見ながら、リーナはハンカチを手で受け取った。
 小さく溜め息を吐いて言う。

「ごめん……、ジュリちゃんは悪くあらへんのに。今までジュリちゃんは箱入りで、ジュリちゃんを狙う女はうちしかおらんかったから……。その…、ジュリちゃんがうち以外の女と接してるの見たら不安になってな……? ほんまに…ごめん……」

 あまり意味が分かってないのか、首をかしげているジュリ。
 リーナは続ける。

「なあ、ジュリちゃん? 覚えてるか?」

「何を?」

「うちが10歳くらいでジュリちゃんが5歳くらいのときのことやったかな。うちが教えた大人の男の座右の銘、覚えてるか?」

「はい」と頷いたジュリ。「大人の男の人の座右の銘は、『据え膳食わぬは男の恥』です!」

「せや。そしてその『据え膳』とは何のことやったか覚えてるか?」

「はい」と再び頷いたジュリ。「『据え膳』とは、『リーナちゃん』のことです! だから僕は、リーナちゃんに誘惑したら応えなきゃいけないのです!」

「よく出来ました。うちの誘惑には応えんとあかんけど、他の女の誘惑には応えたらあかんのやで?」

「はい」

 と、承諾して頷いたジュリ。
 それを見て安堵したリーナが目を閉じて言う。

「ほな、キスしてや。いつもみたいに」

「はい」

 と、にこっと笑い、ジュリがリーナの唇にちゅっと軽くキスをする。

「ありがと、ジュリちゃん。でも……」

 最近ものたりんわ。

 と、心の中で続けたリーナ。

 ジュリと初めてキスしてから約10年。
 ジュリの年が年だから当然と言ったら当然だが、そこから先に進んでいなかった。
 未だにコウノトリを信じているようなジュリ相手だし。

(そ…そろそろ、大人のキス教えんとなー……)

 と、突然にやりと笑ったリーナを見て、ジュリが首をかしげる。

「リーナちゃん?」

「な、なあ、ジュリちゃん?」

「ん?」

「そろそろ大人のキス覚えよか」

「大人のキス……?」と鸚鵡返しに訊き、数秒の間考えたジュリ。「はい」

 と笑って承諾した。

「僕、大人になりたいです」

「うんうん、せやなせやな! ほなっ!」と、ジュリに顔を近づけたリーナ。「いただきます……やでっ!」

 今度は自分からジュリの唇を奪った。

 ぱちぱちと瞬きをし、されるがまま状態のジュリ。
 いつもはライトキスで終わるのだが、リーナがなかなか唇を離そうとしない。

 やがて口の中にリーナの舌が入ってきて、ジュリはその感触を舌で確認してはっとする。

(――タラコ……!)

 ジュリ、歓喜。

(うわぁい、僕の1番好きな食べ物だ!)

 ちなみに2番目はカズノコで、3番目はイクラ。
 つまり魚卵。

(でもハーフだから痛風の心配はありません)

 リーナの舌を口の中に感じながら、感動に包まれたジュリ。

(父上、母上、兄上、姉上…! 僕、少し大人になりました……!)

 リーナの頭をしっかりと両手で引き寄せ、

(大人のキスって、口渡しでタラコを食べることだったのですね……!)

 リーナの舌を吸って口の中にしっかりと捉え、

(ああ…、ジュリちゃんそんな積極的なっ……!)

 なんてリーナがどきどきとしてしまう中、

(好きです、大人のキス……♪)

 ガブっ

 と、リーナの舌に噛み付いた。

「――ふっ…ふぎゃあぁぁあああぁぁあああぁぁああぁあぁぁあああぁぁああぁぁああぁぁああぁあっ!!」
 
 
 
 

第4話 大人のキス? 3/3

 舌を噛まれたリーナの絶叫は森を通り越し、ジュリの自宅屋敷にまで響き渡っていた。
 その夜、ジュリ宅を訪ねたリーナ。
 書斎にいるリュウのところへと行って、あーんと口を開ける。

「リュウ兄ちゃん、治癒魔法……」

「いよう、タラコ女」

 と短く笑い、リーナの舌に治癒魔法を掛ける。
 舌の痛みが消えたあと、リーナは赤面しながら眉を吊り上げた。

「タ…タラコ女言うなっ! ジュ、ジュリちゃんから何か聞いたん?」

「おう、聞いたぜ。ジュリが嬉しそうに『父上、大人のキスってタラコを食べることだったのですね』とか言ってた」

「……」

 苦笑したリーナ。
 深く溜め息を吐いた。

「ジュリちゃんにあーんなことやこーんなこと教えるの、容易やないなあ」

「何おまえ、発情してんのか」

「は、発情っちゅーか、ジュリちゃんも15なんやで? そ、そろそろ次のステップに進んだってええやんっ…! うち、もう10年以上待ってんのやでっ……!?」

「まあ、そうだな。――ところで」と、リュウが話を切り替える。「ジュリはどうだった。おまえ、怪我させてねーよな……!?」

「大丈夫やっちゅーねん」と、リーナは過保護なリュウに呆れて溜め息を吐いた。「ジュリちゃん……、何ていうかな? 今日1日見てて思ったんやけど、ハンターやってくことキツイかもしれん」

 その理由を訊こうとしたときに携帯電話がなったものだから、口を閉ざしたリュウ。
 誰からの電話か確認して露骨に嫌そうな顔をする。

「げ」

「誰からなん?」

「王」

 王がキラを愛しているが故に、リュウは王が好きではない。

「王様?」と鸚鵡返しに訊いたあと、リーナも不機嫌そうに顔を歪めた。「うーわ、嫌なこと思い出したで」

「何だよ」

「今日、ここの裏の森の中で王女さまに会ってな? 正室のお妃さまとの子やなくて、マリアちゃんとの間にできた子の」

「ああ、あの王女な」

 リュウやシュウ、レオンは一通り王族の顔を知っている。
 リュウは毎月、シュウとレオンは交代で、月の始めにヒマワリ城で行われる舞踏会全体の警護をしているから。

「あの王女さま、めっちゃムカつくねん! ジュリちゃんにベタベタベタベタしよって!」

「ふーん。別にそんなに目くじら立てなくてもいーんじゃねーの、まだガキなんだから」

「ガキって言っても、ジュリちゃんと同い年くらいやろ?」

「何言ってのおまえ。マリアがいつ王のペットになったか思い出せ」

 と言われ、眉を寄せて少し考えたリーナ。
 仰天した。

「た、たしかそれってうちが9歳か10歳の頃やん! え、じゃあ、何!? あの王女さま、いくつなん!?」

「10歳」

「マジかいな! どんな老け顔やねん! 背やってうちより高かったし、乳あったし、どうなってんねん最近のガキは!? ――ってか、その前にいい加減に王さまからの電話に出ないとあかんちゃう?」

「相変わらずしつけーな、この王は。出なきゃ駄目か?」

「ヒマワリ城の一大事だったらどうすんねん」

 それもそうかと、リュウは溜め息を吐きながら電話に出た。

「何すか」

「出るのが遅いっ!」

 と、電話の向こうで王が声をあげる。
 その声はリーナの白猫の耳にもよく聞こえた。

「リュウおまえ、私からの電話だからと出るのを渋ったであろう!」

「何か文句が」

「あるに決まっているだろう! どうして、おまえはそう――」

「んで」と、リュウが王の言葉を遮って訊く。「用件は。仕事の話すか」

「うむ、そうだ。何でも今日、ローゼとジュリが運命の出会いをしたそうではないかっ……!」

「はぁ!?」

 と不機嫌そうに声をあげたのはリーナである。
 王が続ける。

「ローゼがすっかりジュリに惚れ込んでな、リュウ」

「それが」

「ぜひジュリをローゼの婿にして、城に迎え入れたいぞ!! 良いであろう、リュウ!? なあ、良いであろうっ!?」

 と、電話の向こうで期待に胸を膨らませ嬉々としている王の声が響く一方。

「………………」

 ブチブチブチィっ…!

 と、リュウとリーナの中で何か切れる音がした。
 
 
 

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第5話 家族全員+リーナで行くんです 1/4

 ジュリ宅の書斎の中にいるリュウとリーナ。

「ぜひジュリをローゼの婿にして、城に迎え入れたいぞ!! 良いであろう、リュウ!? なあ、良いであろうっ!?」

 リュウに掛かってきた、そんな電話の相手――現在の葉月島を担う王の言葉に、

 ブチブチブチィっ…!

 と、己の中で何かが切れる音がした。
 ガタガタと窓ガラスが揺れ、触れてもいないのに粉砕する。

「却下に決まってんだろうが!!」

 とリュウが声をあげるとほぼ同時に、リーナも声をあげる。

「ええわけあるかいなボケェェェエエエェェェェエエェェエエェェエエェェエェェェエっ!!」

「おや? どこの子猫ちゃんかな?」

 と、王。

「ジュリちゃんと結婚するのはうちって決まっとんのやっ! いくら王さまの頼みとて許さへんでっ!!」

「リーナっす」と、リュウが王の質問に答えた。「リンクとミーナの娘の」

「リンクとミーナの?」王が、興味津々と訊く。「何だ…その、ミーナ似だったりするのか…!? 年はいくつだ……!?」

「白猫の尾っぽはねーが、ミーナと瓜二つっすね。身長も同じだし。年は20歳」

「お……おおお!」と声を高くした王。「なんと愛らしいのだ! ぜひ会ってみたいぞ私は!」

「じゃー、リーナを1日レンタルする代わりにジュリの婿養子話を諦め――」

「って、なんでやねん!」とリーナがリュウの胸元をどつく。「うちを犠牲にすんなっ!」

「チッ、駄目か……」

「当たり前やっ!」

 とリュウをもう一発どついたリーナ。
 リュウの手から携帯電話を奪った。

「ちょお、もしもし!? 王さまです!?」

「おお、リーナか!」

「そうです、リーナです! ジュリちゃんの婚約者はうちです! せやからジュリちゃんのこと諦めるよう、ローゼさまに言っといてくださいっ!!」

「そうか、そなたはジュリのフィアンセであったか。それは失礼した」

「まったくやで!」

「そう怒らないでくれ、子猫ちゃん。残念だが、私からローゼに伝えておこう。だが……」

「だが?」

 リーナは眉を寄せた。
 王が続ける。

「次の舞踏会に顔を見せてくれると嬉しいのだが? 子猫ちゃん?」

「うちが舞踏会に……?」

 ここ葉月島で毎月始めにヒマワリ城で行われる舞踏会。
 それには毎月警護の仕事でリュウと、交代で代わる代わるシュウとレオンが行っている。

(ここは断ったらあかんよな……、王さま、ローゼさまに諦めるよう言ってくれるし)

 それに、

(ジュリちゃんも連れて行ったら、うちジュリちゃんと踊れるやろか……)

 ドレスを身にまとった己と、燕尾服を身にまとったジュリが踊っている姿を想像して、リーナの胸が動悸をあげる。

「わ…分かったで、王さま! うち、次の舞踏会でリュウ兄ちゃんに着いて行くで!」

 王が歓喜に声を高くしたのを聞いたあと、リーナは電話を切った。
 そこへ書斎のドアが開き、シュウが眉を寄せながら姿を現した。

「こら、リーナさっきからうるせーぞ。何したんだよ。子供たちもう寝たから静かにしてくれ――って、窓ガラスねーし……」

「シュウくん、次の舞踏会にうちも行くで! あと、ジュリちゃんも!」

「はぁ!?」と不機嫌そうに声をあげたのはリュウだ。「おまえはともかく、何でジュリもなんだよ!? 王がジュリと踊りたいとか抜かしたらどうすんだ!」

「いくらなんでもそれはないやろ、リュウ兄ちゃん。ジュリちゃん男の子なんやから。うち、ジュリちゃんと踊ってみたいのや!」

「あら、舞踏会に行くの? リーナちゃん」

 と、姿を現したのはカレンだ。
 傍らにサラの姿もある。

「うん、うちもついに舞踏会とやらに行くで!」

「まぁ、羨ましいわ。あたくしも久々に行きたいわ」

 と、カレンがちらりとシュウを見る。

 びくっとしたシュウ。
 慌てて首と手を横に振る。

「だ、だだだ、駄目だハニーっ! あのセクハラ王に狙われる!」

「あたくしだってあなたと久々に踊りたいのですわ」

「で、でも――」

「お願い、ダーリン♪」

 と上目遣いでカレンに頼まれたシュウ。

「OKっ♪」

 思わず許可。
 その後、しまったと頭を抱えて絶叫する。

第5話 家族全員+リーナでいくんです 2/4

「カレンも行くならアタシもー」

 とサラも言い出し、リュウが慌てて声をあげる。

「だっ、駄目だサラっ! 王に狙われる!」

「レオ兄もご婦人たちから人気あるから、ずっとっていうわけには行かないだろうけどさ? それでもなるべくレオ兄と踊ってるから大丈夫だって」

「それはそれでムカつく!」

 と騒いでいるところへ。
 今度はリン・ランが登場し、声をそろえる。

「えーっ? カレンちゃん、舞踏会に行って兄上と踊るのですかなのだーっ!?」

「ええ、そうよ♪」

「わっ、わたしたちも行きますなのだっ! カレンちゃんばっかりズルイですなのだっ!!」

 おまえたちまで何を言い出すのかと、リュウが声を上げようとしたとき。

 さらに三つ子――ユナ・マナ・レナが登場。
 ユナ、マナ、レナの順に言う。

「えっ、お姉ちゃんたち舞踏会に行くのっ? いーなあ、あたしもパパと踊りたい!」

「あたしもグレルおじさんと踊る…」

「あたしもミヅキくんと踊りたいなあっ!」

 さらに、ミラも駆けつけて来。

「ええっ? みんな舞踏会に行くのっ? あぁん、パパぁんっ! 私を腕に抱いて踊ってぇぇええぇぇええぇぇええぇぇぇええぇぇえっ!!」

 極めつけに、

「何っ!? おまえたち舞踏会に行くのか!? なら私も行くぞリュウ!」

 キラときたもんだ。

「バっ…!」溜まらず座っていた回転椅子から立ち上がったリュウ。「キラ、おまえだけは絶対に駄目だ!」

「何故私だけは駄目なのだ!」

「王が未だにおまえのこと狙ってるからに決まってんだろうが!」

「王が心配なら、リュウがずっと私と踊ってれば良いではないか!」

「俺だってそうしてーけどな、俺は舞踏会に集まった婦人の相手もしなきゃいけねーんだよ!! んなこと、おまえだって分かってんだろうが!」

「ああ、分かっている! だけどな、私だって……」

 と始まったリュウとキラの口喧嘩。
 断固として折れないにリュウに、やがてキラが泣き出す。

「ふ…ふにゃああああああああああん! 私だって、たまにはリュウと踊りたいのだあぁあああぁああぁああぁぁあああぁぁあああぁぁああぁぁあっ!!」

「が……我慢しろ」

「ふにゃああああああああああああん! 今夜は絶対抱かせてやらないのだあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああっ!!」

「――!!?」驚愕したリュウ。「バっ…!? イ、イトナミお預けだと!? 俺を病気にする気か!!」

 と激しく狼狽してしまう。

 加えてキラの涙。
 それは骨肉の争いを巻き起こす恐れがあるもの。

 ファザコンのミラとユナを除き、ギロリと一斉にリュウに視線を突き刺す一同。

 そしてその一同を見回したリュウ。
 顔を引きつらせたあと深く溜め息を吐き、

「孫――チビたちだけ残してくわけには行かねえから…、次の舞踏会家族全員で行くぞ……」

 ということにしてしまった。
 
 
 

第5話 家族全員+リーナでいくんです 3/4

 
 4月の半ば過ぎ。
 今日は三つ子――ユナ・マナ・レナの24歳の誕生日パーティー故に、ジュリ宅のリビングは賑やかだった。
 毎月行われる誰かの誕生日パーティーには、ジュリとその家族の21人に加え、リンク一家――リンクとミーナ、リーナも加わる。

 ジュリは母や姉たち、姪、リーナを見回して、瞳を輝かせた。

「わあ、母上も姉上たちも、カノンとカリンも、リーナちゃんもとっても綺麗ーっ!」

 三つ子にそれぞれプレゼントを渡し終わり、食っちゃ飲みしようとしたところへ、特注で頼んでいた舞踏会用のドレスが届いた女たち。
 食っちゃ飲みして騒ぐのは後にし、早速試着していた。

「ジュリちゃん、ほんまっ? うち、この淡いグリーンのドレス似合っとる?」

 と、リーナ。
 ジュリがにこっと笑って言う。

「リーナちゃん、とっても似合うね。お姫様みたい」

「おっしゃ!」と、右拳を握ったリーナ。「こうして綺麗なドレス着たうちなら、王女さまにやって敵うはずやで!」

「ローゼさまがどうしたの?」

「ううんー、なんでもないでー」

 とジュリに笑顔を向けたあと、ソファーに座っているリュウに顔を向けて苦笑したリーナ。

「ちょお、リュウ兄ちゃん…、ものっそ暗いけど大丈夫かいな……?」

 と訊いたあとに愚問だと思った。

 ドレスを身にまとい、タダでさえ美しいというのにいつもより輝きが8割増しなった妻や娘、孫娘たちを目の前に、それはもう深い溜め息を吐いている。
 普段はシュウと年の近い兄に思えるほど若いのに、一気に老けたように見える。

 手に持っていたウィスキーの入ったグラスを床に落とし、リュウが突然頭を抱えて発狂する。

「ぐああぁぁああぁぁああぁぁあぁぁあ!! 俺の可愛い黒猫(キラ)が、娘が、孫娘がセクハラ王のターゲットになるうぅぅううぅぅううぅぅうぅうううぅううぅぅうぅぅう!!」

「お、落ち着きや……」

「すでにキラはターゲットだがぁぁああぁぁああぁぁああぁあぁぁああぁぁあぁぁああぁぁあ!!」

「せ、せやな……」

「そしてジュリまでもがあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあああぁぁああぁぁああぁぁあ!!」

「いくらなんでもジュリちゃんは王さまのセクハラのターゲットにはならんやろ、男の子なんやから」

「ジュリが男!? 男だと!?」

「男の子やん……」

「そんなバカなっ…! ジュリは股間に生えてないっ…! ヤロウの印であるモノなんか、生えてねえんだあぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあ!!」

「いや、生えとるの知っとるやろ?」

「認めたくねーんだと」

 と、言ったのはシュウだ。
 苦笑して続ける。

「ジュリが男だって認めたくねーんだとよ、親父。何を今さらって感じだけど……。ジュリが成長するにつれ、ジュリと風呂入らなくなって行ってさ。今では何が何でも絶対にジュリとの風呂は避けてんの」

「ああ、そうかいな……」

 呆れて溜め息を吐いたリーナ。
 母や姉、姪たちのドレスに見惚れているジュリをちらりと見たあと、リュウの隣に腰掛けた。

第5話 家族全員+リーナでいくんです 4/4

「な、なあ、リュウ兄ちゃん……?」

「ぐああぁぁあぁぁああぁぁあぁぁあっ!! カノン・カリンもキラ似だっつのにぃぃぃいぃぃいいぃ――」

「ああもうっ! うちの話聞いてやっ!」

 とリーナがリュウの言葉を遮ると、リュウが振り返った。

「あ? なんか言ったか?」

「言っとるわ!」

「何だよ」

「その……」

 と、言い辛そうにもう一度ジュリの方に目を向けたリーナを見て、リュウが小声になって訊く。

「何だ、リーナ。ジュリのことか」

 頷いたリーナ。
 ジュリの方を気にしながら、リュウの耳元に口を近づける。

「この間、うちが言ったこと覚えてるか? ジュリちゃん、ハンターやっていくのキツイかもしれんって……」

「ああ、そのことか」

 リュウはその理由をまだリーナから聞いていなかった。

「ジュリちゃんがハンターになって2週間経つけど、やっぱりうち思ったわ。ジュリちゃん、ハンターには向いてへんかもしれん……」

 何故なら、とリーナが話を続けようとしたとき、シュウ・カレンの娘である6歳の双子――カノンとカリンがリュウの足元へと駆け寄ってきた。
 髪の毛は母親・カレンを継いで赤いものの、キラそっくりなその顔立ちを微笑ませ、声をそろえてリュウに訊く。

「おじいちゃま? あたくちたち、ドレスにあうかちら?」

「おお、可愛いぞカノン、カリン!」

 とカノンとカリンを抱っこし、すっかり鼻の下を伸ばしてしまったリュウ。
 にやにやと笑いながら、リーナに顔を戻す。

「で、何だってリーナ」

「せやからな? ジュリちゃ――」

 と話しを続けようとしたリーナの言葉を、

「おい」

 と、チビリュウ3匹――サラとレオンの長男・シオン(9歳)と、シュウとカレンの長男・シュン(7歳)と、レナとミヅキの長男・セナ(3歳)が遮った。
 大きい方から髪の毛の色は青、赤、茶。

 リュウそっくりな凛々しく整った顔立ちを不機嫌そうに歪ませてカノンとカリンの手を引き、シオン、シュン、セナの順に言う。

「師匠から離れろ。襲われるぞ」

「そうだ、師しょーからはなれろ。汚れるぞ」

「ししょーからはなねろ。はらむ」

 その3つの頭に、

 ゴスゴスゴスっ!!

 とリュウのゲンコツが1発ずつ。
 チビリュウ3匹が声をそろえて喚く。

「いってーな!! なにすんだよ!?」

「何すんだじゃねえ!! 何でそう可愛くねーんだよ、てめーらは!!」

「あんたそっくりだからじゃねーか!!」

「んだとコラ!!」

「やんのかコラ!!」

 とリュウとチビリュウ3匹が騒ぎ始めたところへ、

「ああもう、止めなよリュウ! 大人気ないな!」

 レオンと、

「兄さんもシュンもセナも、おじいさまに逆らっちゃダメだよ!」

 その次男・ネオン(7歳)が止めに来るものの、騒ぎは収まらず。

「もうええわ……」

 リーナは深く溜め息を吐き、リュウの隣から立ち上がった。
 ジュリのところへと向かって行って、今度はその隣に腰掛ける。

「もうちょっとで舞踏会やなあ、ジュリちゃん。ダンスのステップ、もう覚えたん?」

「うん、覚えたよ!」

 初めて行く舞踏会が楽しみなのか、わくわくとした様子のジュリ。
 リーナの手を取って微笑む。

「一緒に踊ろうね、リーナちゃん!」

「うん…、一緒に踊ろな、ジュリちゃん」と、微笑み返したリーナ。「でもその前に…、やらなあかんこともあるよな? ジュリちゃん」

「え?」

 と首をかしげたジュリ。

「ジュリちゃんは、ハンターなんやから」

 そんなリーナの言葉を聞いて、その先の言葉を察した。
 困惑し、大きな黄金が揺れ動く。

「リーナちゃん、僕は…………」
 
 
 
 
 その頃のヒマワリ城。
 王とその娘――ローゼは、向き合って会話をしていた。

「だ、だからだな? ローゼ……」

「嫌ですにゃ、お父上」

「し、しかしな? ジュリにはもうフィアンセがいて……」

「関係ないですにゃ、お父上」

「だ、駄目だローゼ。ジュリを奪ってしまったら、フィアンセのレディが涙に暮れてしまうのだ……」

「このままじゃローゼが涙に暮れますにゃ、お父上」

「うっ……」

「お父上はおとなしく、娘の幸せのために動けばいいのですにゃ」

 そう言い、去っていく娘・ローゼの背を見送りながら、王は苦笑した。

(す…すまぬ、リーナ……。来月の舞踏会までにローゼを説得できそうにもないぞ……)
 
 
 

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第6話 舞踏会 前編 1/3

 5月の頭。
 今夜はヒマワリ城での舞踏会があり、ジュリとその家族全員+リーナで行くことになっている。
 だが、昼間はいつも通りそれぞれ仕事や学校へ行っていた。

 先日も来たジュリ宅の裏に広がる森の中、リーナはきょろきょろしながら辺りを見回していた。

「おかしいなあ。ほんまにおらんわ」

 またローゼに怪我させた凶悪モンスターがいるとヒマワリ城から連絡をもらったのだが、その姿をいくら探しても見当たらなかった。 「本当だね、リーナちゃん」

 と、リーナと同様に辺りをきょろきょろと見回しているジュリ。
 その顔を見ながら、リーナは言う。

「探してるモンスターが現れたら、ジュリちゃん分かってるな?」

「リ…、リーナちゃん、僕……」

 と困惑顔になったジュリの両手を、リーナが握る。

「ジュリちゃん…、いつまでもそうしてるわけにはいかんのやで? ジュリちゃんは、ハンターなんやから。人々の命を救うため、がんばらなあかんのやから……」

 そんなリーナの言葉に、大きな黄金の瞳を揺れ動かすジュリ。
 はい、と頷くことは出来なかった。
 
 
 
 
 その夜。
 舞踏会INヒマワリ城。
 いつもはリュウと、シュウまたはレオンが招待客のフリをして警護の仕事に来ているのだが。
 本日はジュリとその家族+リーナも来ていた。

 ブロンドの長いウェーブヘアに、ブルーの瞳、甘い顔立ちをした現在の葉月島を担う王。
 愛するキラやその美しい娘たちに会えると、瞳を輝かせてダンスホールの入り口でジュリ一同を迎えた。

 のだが、

「どうも」

 なんて刺々しい声と共に、燕尾服を身にまとったリュウとチビリュウ3匹――シオン・シュン・セナが真っ先に目の前にどーんと現れ、顔を引きつらせた。

「え、ええいっ! リュウ! 何だこのおまえにそっくりな腹の立つ顔をした子供は!? しかも、舞踏会だというのに堂々と物騒なものを背負わせるでない! おまえらは舞踏会の招待客のフリをしなければならないのだぞ!?」

 チビリュウ3匹は、いつも剣術の修行のときに使っている武器を背に装備していた。
 シオンは真剣を、シュンは木刀を、セナは竹刀を。

「俺らが招待客のフリするつったって、もう俺らの顔を知らねー人なんていねーんだから意味ねーです。青い頭がシオン、赤い頭がシュン、茶色い頭がセナ。俺の孫っすけど何か文句が」

「な、何なんだその強烈な遺伝子は!? 隔世遺伝するならキラ似の――」

 と、リュウの足元から小さな愛らしい2つの姿が現れ、言葉を切った王。
 赤い髪をしているものの、キラそっくりなその顔立ちを見て頬を染めた。

「お…おおおっ……! な…なんと可愛いのだっ…美しいのだっ……! おい、リュウ、この子猫ちゃんたちもおまえの孫か!?」

「シュウとカレンの娘っす。カノン・カリン、一応コレが葉月島の王だから挨拶してやれ」

 リュウの脚に抱きついているカノンとカリン。
 王を見上げて微笑み、声をそろえた。

「はじめまちて、おうちゃま」 

「あたくちはカノンですわ」

「あたくちはカリンですわ」

「おお……!」と瞳を輝かせる王。「よしよし、おいでカノンにカリン」

 とカノン・カリンに手を伸ばした瞬間、

「行け」

 と下ったリュウの命令。
 そして、

「おう」

 承諾したチビリュウ3匹。

 ドスゴスムギュっ!

 とシオンの拳が腹に、シュンの拳が股間に、セナの靴が爪先に飛んできて、王はその場に蹲る。

第6話 舞踏会 前編 2/3

「ぐあぁあっ…! きっ、貴様シュンっ…! どっ、どこを狙っているのだっ……!」

「だってなぐりやすいとこにコカンが。王相手だからと力ぬいてやったぜオレたち」

「それでも痛いわ、このバカモノどもめ!」

 なんて王の怒声を聞き、リュウの背後から慌ててチビリュウ3匹の親が顔を出す。

「こら、シオン! 王さまに謝りな!」

「何してんのシオン! 申し訳ございません、王様! 僕の教育がなってないばかりに!」

 とサラ・レオン夫妻がシオンに頭を下げさせ、

「うっわああぁぁあぁぁあ! バっ、おまっ、シュンっ! 何てことしてんだよおまえは!?」

「ああもう、何てことするのよシュン! 王さま申し訳ございません!」

 シュウ・カレン夫妻もそれに続いてシュンに頭を下げさせ、

「ちょ、ちょっとセナ!? 暴力振るっちゃダメって、ママいつも言ってるじゃん!」

「ったくもう、お義父さん似なんだから! も、申し訳ございません、王様!」

 さらにレナ・ミヅキ夫妻も続いてセナに頭を下げさせる。

「良い、頭をあげるのだ。――って、おまえたち男には言ってないわ! おまえたち男は一生頭を下げておれ!」

 と、王はサラとカレン、レナに頭を上げさせたあと、リュウの後方に顔を向けた。
 真っ先にキラの姿を見つけ、その手を取って微笑し、頬を染める。

「ああ…キラよ、そなたは相変わらずこの世に並ぶ者が無いほど美しいな。元気であったか? キラ」

「はい」と笑顔を作るキラ。「王さまも元気そうで何よりでございます」

 誇り高い超一流ハンターである主――リュウの名を汚さぬよう務めるところは、昔も今も変わらない。
 もっとも、リュウはキラに笑顔など振りまかないでほしいが。

 キラの手にキスしたあと、王がさらにリュウの後方に目をやる。
 リュウ・キラの他の娘たちを見回して嬉しそうに笑ったあと、辺りをきょろきょろと見回した。

「おや? おい、リュウ? ジュリとリーナはどうした?」

「ジュリとリーナなら……」

 とリュウが近くにあった柱に目を向けると、その影からジュリとリーナが姿を現した。
 リーナはジュリの手をしっかりと握っている。

「王さま、初めまして、ジュリです」

 とキラとカノン・カリンの笑みに続いてジュリに必殺・破顔一笑され、思わず眩暈で倒れそうになる王。

「ああ…、何てことだ……! そなたがまことに男か疑ってしまうぞ私はっ……!」

 ジュリの傍ら、リーナが不自然な笑顔を作る。

「は…初めまして、王さま。リーナです」

「おお、そなたがリーナか!」とジュリからリーナに目を移し、瞳を輝かせた王。「何とミーナそっくりで愛らしいレディなのだ!」

「は、はあ……」

 と適当に返事をしながらグリーンの瞳をせわしなく動かしてしまうリーナ。
 王女――ローゼがいつ現れるかと、そわそわしてしまう。

 王に手を取られ、そこにキスされながら、リーナは訊いた。

「あ、あの王さま?」

「何だ、リーナ?」

「うちとの約束、守ってくれはりましたよね?」

「む?」

「ローゼさまに、ジュリちゃんのこと諦めるよう説得してくれはりましたよね?」

「ギクっ……」

「ギクっ?」

 と眉を寄せるリーナ。
 強張った王の顔を見て、まさかと察する。

「王さま、ローゼさまのこと説得してくれはってないんです!?」

「…そ…そのぉ……」

 額に冷や汗を掻き始めた王が、リーナからそのブルーの瞳を逸らす。
 否定しない王に、リーナがどういうことかと声をあげようとしたとき。

第6話 舞踏会 前編 3/3

「あっ、ジュリさんですにゃ!」

 と、聞き覚えのある女の子の声。
 リーナの白猫の耳に、ひどく心地が悪い声。
 さらのその声の持ち主が、ダンスホールに集まっている人々の中から姿を現し。

「ジュリさあああああああああああああああああああああああああああああんっ!!」

 とジュリ目掛けて突進してくる。

「させるかいなボケェっ!!」

 と声をあげたリーナ。
 ドレスのスカートをがばっと捲くり上げ、脚に装備していた2本の短刀を抜いてジュリの前方2mに立ちはだかる。

 刃物をちらつかせているのにも関わらず、

「会いたかったですにゃああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 突進してくる物体の勢いは衰えるどころか、さらに増し。

「ふん、ええ度胸やないかい! 上等やっ!」と短刀を逆手に持ち、戦闘態勢に入ったリーナ。「かかってこいやあぁあああぁあああぁああぁぁあああぁぁぁああぁぁああぁぁあっ!!」

 と絶叫した直後、

「――へっ?」

 と声を裏返し、目を丸くする。
 煌びやかなドレスの裾を両手で持ち上げた、その突進してくる物体――ローゼ。

「ジュリさあああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!」

 リーナの目の前、それはぴょーんと高く舞い。

「――げっ!?」

 うちのとこに落ちてくる!

 と顔を引きつらせたリーナの頭を片足で踏ん付け。

「どわぁっ!?」

 リーナの身体が前のめりに倒れていくと同時に、再び高く舞い。
 リーナの後方に立っていたジュリ目掛けて落ちて行き、

「わわっ!? ローゼさま危ないっ!」

 ドサっ…!

 と、慌てて腕を伸ばしたジュリに抱き留められた。

 にこにこと笑っているローゼ。
 ジュリの首に腕を回し、

「会いたかったですにゃんっ♪」

 ジュリの唇を奪った。

「あ」

 と、ぱちぱちと瞬きをする一同の中、

「――!!?」

 一匹だけ大衝撃を受けたリーナ。
 うつ伏せに倒れたまま後方の2匹を見つめ、声が出ずただ口をぱくぱくとさせる。

(ジュ…ジュリちゃんがっ…! う、うちのジュリちゃんの唇がっ……!!)

 リーナとローゼの顔を狼狽しながら交互に見た王。
 苦笑してリーナに駆け寄り、手を差し出した。

「だ、だ、だ、大丈夫かい? 子猫ちゃんっ?」

「…あっ…あっ…ああっ……!」

「そ、そのっ……、わ、わ、わ、悪かったねっ?」

「うちのジュリちゃっ…、ジュリちゃっ…! ああっ…、あああっ……!!」

「ロ、ローゼにはちゃんと言ってお――」

「ああぁあああぁぁああぁぁああぁぁあああああぁぁあああぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああっ!!」

 と王の言葉を遮り、絶叫したリーナ。
 倒れた際に手から離れた2本の短刀を再び握り、

「死にさらせやぁあああぁぁあああぁああぁぁあああぁぁあああぁぁああぁあああぁぁああっ!!」

 ローゼ目掛けて、それをぶん投げた。
 だがその2本の短刀は、

「にゃにゃんっ♪」

 とローゼの右手の人差し指と中指、中指と薬指の間に挟まれ。

「甘いですにゃ♪ 銃弾ならともなく、ローゼにこんな遅いもの当たらないですにゃっ♪」

「――なっ……!?」

 と驚愕しているリーナのところへ、

「お返ししますにゃんっ♪」

 戻されてきた。
 
 
 

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